損益通算とは、一定期間に行われた株式等の売買を個別に計算し、その利益と損失を合算し、最終的に利益であったか、損失であったのかを算出することを言います。
上場株式等は、1月から12月までの譲渡損益(株式等の売買による損益)を通算して、最終的に利益が出た場合に、原則として確定申告を行わなくてはなりません。ただし、上場株式等の譲渡損失と配当金等は損益通算が可能であり、譲渡損が出た場合は、配当所得との損益通算によって3年間の繰越控除を受けることができます。特定口座(源泉徴収あり)を選択した場合には、確定申告は不要となります。
2016年1月の税制改正で、上場株式等の対象範囲が上場株式・公募株式投資信託等から特定公社債・公社債投資信託にまで拡大され、上場株式や株式投信などの配当金や譲渡損益と、特定公社債等の利子や分配金、譲渡損益との損益通算が可能となりました。
サラリーマンの場合は、給料以外の他の所得で、総額年間20万円以下であれば申告は不要になります。また、特定口座で源泉徴収ありの場合は、申告を証券会社が代理申告してくれるので、その場合も申告不要です。損益通算は、確定申告を行うことを前提としていますので、こう言ったケースの場合であれば、当然、損益通算はできません。
★所得区分
確定申告を行う際、収入を細分化して申告書に記入することになります。サラリーマンの方の給料であれば給与収入、個人事業主であれば、年間売上高を事業収入、不動産を賃貸しているのであれば、不動産収入と言うようにですね。そして、仮想通貨の売買やFXは、雑所得に区分されます。株式投資の場合は、売買が譲渡所得、配当金の場合は配当所得、社債等の利息は利子所得になります。
所得税には、総合課税制度と分離課税制度の2種類があります。総合課税制度とは、各所得金額を合計して所得税額を計算する制度を言います。
総合課税制度の対象となる所得は、次の様に列挙されています。
①利子所得(源泉分離課税とされるもの及び平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く。)
②配当所得(源泉分離課税とされるもの、確定申告をしないことを選択したもの及び、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当について、申告分離課税を選択したものを除く。)
③不動産所得
④事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。)
⑤給与所得
⑥譲渡所得(土地・建物等及び株式等の譲渡による譲渡所得を除く。)
⑦一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。)
⑧雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。)なので、これらの所得の間であれば、基本的には所得通算はできます。
申告分離課税制度は、一定の所得については、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算し、確定申告によりその税額を納める制度を言います。申告分離課税制度となっている例としては、山林所得、土地建物等の譲渡による譲渡所得、株式等の譲渡所得等、平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等に係る利子所得及び一定の先物取引による雑所得等があります。また、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得(平成28年1月1日以後は特定上場株式等の配当等に係る配当所得)については、申告分離課税を選択することができます。
注意点としては、申告分離課税制度の中に、株式等の譲渡所得等とあります。申告分離課税制度は、総合課税制度の所得とは切り離して所得税額を計算することから、株式投資の売買損益と仮想通貨やFXの売買損益とは、損益通算を行うことはできないと言う事になります。
但し、申告分離課税制度の中のものであれば、株式投資の売買損益と他の損益を通算できるものもあります。詳細については、国税庁か、税理士等の専門家にご相談ください。