★インサイダー取引とは?
インサイダー取引とは?
インサイダー取引とは、上場会社または親会社・子会社の役職員や大株主などの会社関係者、および情報受領者(会社関係者から重要事実の伝達を受けた者)が、その会社の株価に重要な影響を与える「重要事実」を知って、その重要事実が公表される前に、特定有価証券等の売買を行うことです。株式投資を行う上で、重要となる法律の一つの金融商品取引法で規制されています。
平成26年4月1日施行の金融商品取引法等改正において、投資法人の発行する投資証券等、主に投資信託の取引がインサイダー取引規制の対象となりました。対象となる会社関係者の範囲には、上場投資法人(いわゆるJ-REITの発行者)、その資産運用会社及びその資産運用会社の親会社その他の特定関係法人の関係者等が含まれます。
インサイダー取引は、金融商品市場の信頼を損なう代表的な不公正取引とされています。
インサイダー取引を禁止する理由には、主に「投資者保護」、「金融商品市場への信頼確保」が目的とされています。具体的には、株価上昇に起因する情報漏えいと株価下落に起因する情報漏えいの2点があげられます。
株価上昇に起因する情報漏えいは、例えば、情報元の投資対象会社が、他社に抜きんでた排他的技術開発に成功したと言う情報が水面下で流れていたとします。市場の独占的要因なので、その技術を使用したいと言う会社が複数社現れるとすると、投資対象会社はロイヤリティによる収入が上がる確率が出てきます。対して、自社で独占的使用をするとなると、その利益率は上昇することになります。
その情報を、一般的に公開される前に、投資対象会社の株を取得したとすると、当然、情報公開後の株価が上がると言う事は十分に見込める事になります。そうすると、一般的な投資家は、不当に高い金額で株式を取得することになりますので、情報公開後に取得した投資家は不利になる、市場の公正性がなくなると言う事が言えますね。
但し、ポイントとしては、あくまでも、情報公開前に投資対象会社の株式を取得していると言う点にあります。そこで、疑問が生じると思うのですが、その情報自体が、ガセネタの場合もあるのでは?要するに、情報に信憑性がないと言う事ですね。そこで、重要となるのが、会社関係者からの情報か否かと言う事になります。例えば、パート・アルバイトさんでも、その独占的技術の開発状況を知り得る状況があり、その情報を他の者に漏らしてしまい、情報を取得した人が、情報公開前に対象会社の株式を取得してしまった場合でも、インサイダー取引の対象となってしまう点にあります。重要なポイントは、あくまでも、会社関係者から重要事実を知ったと言う点にあります。
では、その重要事実が、株価の下落の場合は、どうでしょうか。
株価下落の場合であれば、主な要因としては、業績不振と言う点が上げられます。そのままでは、損失だから良いのではないかと思われる方もおられるかと思います。
その点が、重要なポイントとなる訳です。例えば、情報公開前に、特別損失や経常損失になると言うことがわかれば、通常の株価よりも、大きく株価が下落すると言う事はわかってしまいます。と言う事は、現物株式の場合であれば、情報公開前に、損切りや利益確定売りをすると、その段階で、通常の下落幅よりも小さな損失や利益幅で済むと言えます。そうすると、情報公開後に、情報を知った投資家とで不公正な状況が作り出されてしまうと言う事になります。同時に、信用取引を行っている方については、空売りができますので、大量の空売り注文を出し、下がりきったところで買戻し、大量の利益を得る事ができると言えますね。
①上場会社等(上場会社とその親会社・子会社)の役員等・・・役員、代理人、従業員、パートタイマー、アルバイト等
②上場会社等の帳簿閲覧権を有する者・・・総株主の議決権の3%以上を有する株主等
③上場会社等に対して法令に基づく権限を有する者・・・許認可の権限等を有する公務員等
④上場会社等と契約を締結している者または締結交渉中の者・・・取引先、会計監査を行う公認会計士、増資の際の
元引受会社、顧問弁護士等⑤②、④が法人である場合、その法人の他の役員等・・・銀行の融資部門から投資部門への伝達等
※法人と個人は、別人と言うのが民法で規定されている条文の主旨です。なお、上記①から④の会社関係者から情報を知り得た者も当該規制の対象となります。
また、上記①から④の会社関係者は、当該会社関係者(退職等)でなくなった後も、1年間は当該規制の対象となります。子会社に係る会社関係者は、当該子会社に係る重要事実を知り得た場合にのみ、会社関係者として規制の対象となります。
法規制により、金融商品取引業者での登録を義務付けされている会社関係者(いわゆる内部者の方)とは
①次に掲げる者
イ上場会社等の取締役、会計参与、監査役又は執行役
ロ上場投資法人等の執行役員又は監督役員
ハ場投資法人等の資産運用会社の取締役、会計参与、監査役又は執行役②次に掲げる者
イ上場会社等の親会社又は主な子会社の取締役、会計参与、監査役又は執行役
ロ主な特定関係法人の取締役、会計参与、監査役又は執行役③上記①及び②に掲げる者でなくなった後1年以内の者
④上記①に掲げる者の配偶者及び同居者
⑤上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の使用人その他の従業者のうち執行役員(上場投資法人等の執行
役員を除く。)その他役員に準ずる役職にある者
⑥上場会社等又は上場投資法人等の資産運用会社の使用人その他の従業者のうち重要事実を知り得る可能性の高い
部署に所属する者(前号を除く。)
⑦上場会社等の親会社若しくは主な子会社又は主な特定関係法人の使用人その他の従業者のうち執行役員その他役
員に準ずる役職にある者
⑧上場会社等の親会社若しくは主な子会社又は主な特定関係法人の使用人その他の従業者のうち重要事実を知り得
る可能性の高い部署に所属する者(前号を除く。)
⑨上場会社等の親会社若しくは主な子会社又は主な特定関係法人
⑩上場会社等の主要株主(総株主の議決権の10%以上を有するもの)
⑪有価証券等に記載されている大株主のうち帳簿閲覧権(総株主の議決権の3%以上を有するもの)を有するもの会社関係は、上記以外でも、取引のある証券会社の判断で確認が入る場合もあります。
用語解説
★重要事実とは
次に、重要事実とは、投資者の投資判断に著しい影響を与えると想定される、会社の運営、業務または財産に関す
る情報のことです。上場会社等および子会社について、「決定事実」、「発生事実」、「決算情報」、「その他」
に分類されます。★上場会社等の決定事実とは
上場会社等の決定事実とは、株式・新株予約権の発行、自己株式の取得、株式分割、合併、提携、その他新技術等
に係る事項等言います。★上場会社等の発生事実とは
上場会社等の発生事実とは、災害に起因する損害または業務遂行の過程で生じた損害、主要株主の異動、訴訟の提
起又判決、手形の不渡り、債権者による債務の免除等を言います。★上場会社等の決算情報とは
上場会社等の決算情報とは、業績予想の大幅な変更・修正(売上高、経常利益、当期純利益等)を言います。
★その他の重要事実は
決定事実、発生事実、決算情報の他には、上場会社の運営、業務または財産に関する重要な事実であって投資者の
投資判断に著しい影響を及ぼすものが含まれます。
その中には、子会社に係わる重要事実も含まれており、子会社に係る情報であっても、たとえばグループ全体の経
営等に大きな影響を及ぼすものがあったりします。★重要事実の公表とは
インサイダー取引に該当しなくなるタイミングは、重要事実が公開された後の売買になります。
では、重要事実の公表は、
①上場会社の代表取締役等またはそれに類する者が、重要事実について、定められている2つ以上の報道機関に公開
してから、12時間以上の周知期間が経過すること。
②上場会社等が上場する金融商品取引所等に対して重要事実を通知し、金融商品取引所において内閣府令で定める電
磁的方法により公衆の縦覧に供されること。
③重要事実に係る事項が記載された「有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書、その他訂正報告書等」が公衆の縦
覧に供されること。のいずれかに該当することとされています。
★特定有価証券等とは
特定有価証券は、次の「特定有価証券」および「関連有価証券」からなります。
①特定有価証券とは、株券・社債券・優先出資証券・優先出資引受権証書・新株予約権証券 等を言います。
②関連有価証券とは、カバードワラント・他社株償還条項付債(EB債)等を言います。
③その他政令で定める有価証券
インサイダー取引規制に違反した場合の罰則は、以下の法令に規定があります。
会社関係者が重要事実の公表前に行う株券等の取引(金商法166条1項)
会社関係者から重要事実の伝達を受けた者または職務上伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であって重要事実
を知った者が、その公表前に行う株券等の取引(金商法166条3項)
左記の行為を行った者に対して5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金(または併科)
(金商法197条の2 13号)
左記の行為により得た財産は没収
(金商法198条の2)
左記の行為を行った法人に対して5億円以下の罰金
(金商法207条1項2号)正当な取引をしているのに、無知による違法行為認定は避けたい所です。このインサイダー取引の他にも、様々な取引規制や違法行為があります。そうならないためにも、知識を十分に身に着け気を付けた取引を行いたいところですね。